判決はもうすぐ?最高裁で争われている更新料無効裁判|編集長ブログ
こんにちは。大家さんのための賃貸経営マガジン「オーナーズ・スタイル」の統括編集長の上田です。今回は「賃貸経営お役立ち情報」です。最高裁で争われている更新料裁判についてお話しします。
「更新料は無効」の判決が出た場合、オーナーは深刻な事態に陥る可能性が大きい
「賃貸住宅の更新料は違法なものであり、無効ではないか」とする裁判が、最高裁で争われています。近いうちに判決が出る可能性があります(今、大阪高裁で審議中の更新料裁判が1件あって、その判決が出た後に、最高裁の判決が下されるとも言われているそうです)。
オーナー側の弁護団と行動を共にする九帆堂の久保原弁護士にお話を伺いました。
まず、一括借上げ契約のオーナーは、更新料を受け取っていませんので、この問題には基本的には無関係です。
しかし自主管理などで、入居者から更新料を受け取っているオーナーにとっては大きな問題です。無効とされる根拠は「消費者契約法」です。これに基づいて、過去の裁判では更新料について、
「目的や性質が明確ではない」
「合理的な根拠が見出せない」
「消費者の利益を一方的に害する」などの判断がなされています。
これまでの裁判では、大阪高裁で1勝3敗と、オーナー側は負け越しています。
これらが最終的にどう判断されるのか、最高裁での判決が間近に迫っています。
「更新料は有効」の判決であれば、問題はありません。
「個別判断」という場合は、判断基準が作られることになるでしょうが、個別に更新料返還訴訟が起きる可能性があります。
「更新料は無効」という判決が出た場合は、大変です。今後、更新料を受け取ることができなくなるだけでなく、入居者から返還要求があった場合、過去に受け取った更新料を返さなければならなくなります。消費者契約法が施行された平成13年4月1日まで遡っての返還となりますから、深刻な事態といっていいでしょう。
リスクに備えるために、平成13年からの約9年間の間に受け取った更新料の総額を計算してみてください。10室×6万円で、入居者の内、半分は更新をせずに退去すると想定します。オーナーは2年に1度、残り半数の入居者から家賃1ヶ月分の更新料を受け取ったとします。
5部屋×6万円×4.5回=135万円
このくらいの金額を必ず返還しなければならない事態になる可能性があるのです。大丈夫でしょうか?
一括借上げを行っている大手の管理会社や保証会社であれば、なんと数十億~数百億円もの更新料の返還が、求められる可能性があるのです。
最も厳しい無効判決が出た場合、以降の対策として、以下の方法があります。
①更新料を廃止する
すでに更新料を「無し」としている物件が増えています。入居希望者に選ばれる物件にするために、必要な措置かもしれません。
②月額賃料に上乗せする
家賃が高くなりますので、選ばれない物件になってしまう可能性も。
③途中解約清算型一時金とする
賃料の前払いと規定して更新料を受け取る方法。途中退去の場合は月割りで清算して返却します。しかし更新料無しの物件が増える中、どこまでがんばれるか・・・。
以上、全国のオーナーの皆さんが、固唾をのんでこの裁判の行方を見守っています。
更新料とは
賃貸住宅における更新料は、首都圏、関西圏などにある地域慣習です。全国的なものではありません。戦後の住宅難を背景に生まれたと言われています。
首都圏では、更新料は2年ごとに、賃料の1か月分が一般的。一括借り上げの場合、更新料は管理会社が全額受け取るのが一般的。
一括借上げではないが管理会社に管理委託している場合や、更新などの契約行為を不動産会社に委託している場合は、オーナーが更新料の2分の1を管理会社などに「事務手数料」として支払うのが一般的です。
更新料の返還が求められる事態になった場合、「事務手数料」はあくまで「事務手数料」であり、更新料は全てオーナーが受け取ったとみなされ、オーナーに全額の返還義務が生じますので、注意が必要です。
消費者契約法とは
消費者契約法は、平成13年4月1日に施行された、消費者の保護を目的とする法律です。第10条に、「消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」と定められており、これがこれまでの更新料無効判決の根拠となっています。