オール電化の賃貸住宅は、今後どうなるの?|編集長ブログ
こんにちは。大家さんのための賃貸経営マガジン「オーナーズ・スタイル」の統括編集長の上田です。今回は「読者の声とお悩み」です。オール電化賃貸についてご紹介します。
オール電化住宅にどんな問題が生じるのか。設備ごとで具体的に考察
今回は「オール電化の賃貸住宅の建設を考えていたところ、
震災と原発事故が発生。世の中を挙げて節電が叫ばれるようになりました。今後、オール電化はどうなるのでしょうか?」とのご質問です。
・・・とても難しいテーマです。今はまだ混沌としていて、なかなか答えが出ない状況といっていいでしょう。東日本大震災のあと、多くの方がお気づきと思いますが、東京電力さんがすべての広告宣伝をストップしています。当然、オール電化をすすめる広告もストップです。
「停電になったら困る・・・」
「電気をたくさん使うから肩身が狭そう・・・」
「電気代が上がりそうで心配」
「だからオール電化なんて今さら・・・」
そんなふうに思っている人も多いかもしれません。しかし実際のところどうなのでしょうか。今後、オール電化住宅にどんな問題が生じるのか、具体的に各論で、考察してみたいと思います。
まず停電になった場合の、IHクッキングヒーターです。
「停電になったらIHクッキングヒーターでは、調理ができません。」
たしかにそうです。ですが、突発的な停電が起こる可能性は低く、停電があるとすれば、それは「計画停電」です。計画停電による停電時間は2~3時間と、短いはずです。たとえば卓上ガスコンロなどを用意しておけば、なんとかしのげるのではないでしょうか。問題というほどではないと思います。
災害時には、ガスよりも電気の復旧が、はるかに早いことは、今回の震災でも実証済みです。ガスコンロよりもIHクッキングヒーターの方が、災害後は、頼りになると言えます。ちなみに、ガスコンロも着火時に電気を使いますが、電池で火花を発生させるので、停電の影響は受けません。
次に、給湯についてです。オール電化住宅では、深夜電力で沸かしたお湯が貯湯タンクに常に貯まっています。日中の停電時もお湯を使うことができます。
ガスの給湯器は着火時に電気を使いますので、停電時は、ガスが通っていても、お湯を作れません。停電時はオール電化の貯湯タンクの方が安心です。災害時は、貯湯タンクの中にストックされているお湯(冷めれば水)が役立ちます。むしろ安心材料と言えるでしょう。
冷房については、エアコンにせよ、扇風機にせよ、ほとんどの家庭が電力に頼っています。停電による停止は致し方なく、この状況から逃れられないことは、オール電化住宅も、そうでない住宅も同じです。
停電時も災害時も、灯油のストーブなど、電気を使わない手段を用意しておくことで、しのげるでしょう。災害時は、ガスの暖房機よりも電気の暖房機の方が、復旧が早いはずです。
・・・このように、停電時や災害時に、「オール電化だと不利になる」といった心配は、あまりする必要がないと思われます。
次に社会情勢が与える影響を考えてみたいと思います。
今後、原発事故などの影響で、電気代が上がったりすると、電気使用量の多いオール電化住宅は、不利な立場に立たされる可能性があるのでしょうか。
たしかに今後、電気代が高くなる可能性は否定できません。しかし、おどろくほど高くなることは、国の政策として、考えにくいと思います。
オール電化には、深夜の割安な電力を多く利用し、さらに電気代の全体が安くなるオール電化割引があります。今後、これが大きく改変されても、オール電化の人達だけが不利になる、といったことは、考えにくいのではないでしょうか。
そもそも電気の使用量が多いことを、どう考えるのか、という問題です。オール電化は、深夜の電力を多く利用します。深夜は電力が余り気味の時間帯であり、余った電力は廃棄されています。
ですから、誤解を恐れずに言ってしまえば、昼間の電力使用量は減らす必要がありますが、深夜の時間帯の電力を減らす必要は、あまりないのです。昼間の電気使用量と、深夜の電気使用量を一緒に考えてはいけないのです。
・・・ということで、すでにオール電化の賃貸住宅を経営されているオーナーさんの場合、以上のような説明とアピールを行うとよいと思います。
物件内での卓上コンロや灯油ストーブの使用を禁じている場合は、停電時、それを可能とすることで、入居者や入居希望者の不安を抑えることはできそうです。
そうはいっても、今後、夏の日中にIHクッキングヒーターを使うのは日本人として心苦しいかもしれません。そんな方は、オール電化を太陽光発電と組み合わせることを、ご検討ください。
日中の電気は、太陽光での発電で賄えるので、省エネです。しかも二酸化炭素を発生させないクリーンな発電です。余剰な電力を売ることもできますので、電力の供給にも貢献できます。今後、ますます評価が高まり、ニーズが増えるのではないでしょうか。
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以上、オール電化の今後については、雰囲気に流されることなく、冷静に考えていくべきと思います。
しかしそうは言っても、実際の賃貸市場でどう影響が出るのか。繰り返しますが、今はまだ混沌としていて、なかなか答えが出ない状況といっていいでしょう。しっかり見極めていきたいと思います。
ちなみにですが、現在ガスコンロをご利用の場合は、災害時に電気がいち早く復旧することを想定してIHクッキングヒーターを1台用意しておくと、きっと安心です。購入をご検討ください。